7回目のリサイタルに寄せて

あっという間に2014年も1ヶ月が過ぎようとしています。
時の流れの速さには驚くばかりです。
先週は荒川区の保育園にお邪魔してソプラノ、チェロ、ピアノのトリオで園児のみなさんの前でミニコンサートをしました。詳細はこちら
子供たちの純粋で素直な反応に演奏した私たちも幸せな気分になりました。


そして、今週末にはブラームスの歌曲のレコーディングが控えています。
昨年に引き続き、アマチュアの歌い手さんと共に録音に臨むのですが、学生の頃から熱心に合唱活動をされ、自ら指揮もし、そして70歳を超えられた現在も先生について声楽の指導を受け、大好きだとおっしゃるドイツリートの数々を学ばれています。
一緒に演奏させて頂いて私自身とても勉強になっています。
歌手人生の総まとめとして、大好きなブラームスの歌曲を少しずつ記録に残したいと一昨年から始まったレコーディング。一昨年はジプシーソング全曲を中心に録音に臨んだのですが、今年はナイチンゲールをテーマに集めた歌曲を中心に録音予定です。ブラームスの音の世界観を担う重要な役割を持つピアノパート、少しでも良いものになるよう、最後の仕上げをして録音に臨みたいと思います。

 

最後になってしまいましたが、本題である7回目のリサイタルまであと3カ月を切り、いよいよチラシも完成し25日よりイープラスでのチケット販売も開始されました。

 

今回は初めてのリサイタルからちょうど10年ということもあり、原点に戻り、第1回のリサイタルでも取り上げたドビュッシーの前奏曲集から6曲を演奏します。パリのエコール・ノルマルで受けた貴重なレッスンの時の先生の書き込みの意味がやっと少し見えてきて、当時より少し自由に、そして少しだけドビュッシーの想いに近づいた演奏ができそうな気がしています。ドビュッシーの書き込みがある譜面で勉強したという素晴らしい教授に教えて頂けたことは今さらながら本当に素晴らしい体験であったと幸運に感謝しています。

 

そして、プログラムの最初に演奏予定のベルギーの作曲家ペーテル・ブノワの作品は演奏していくにつれ、その彼独特の味わいに魅かれていっています。そんなに数多くの作品を残した作曲家でないことと、晩年は地元ベルギーに戻り出身地であるフランデレンの芸術文化の発展の為に尽くしていたためあまり知られていない作曲家ではありますが、彼が若き日に希望に燃えてパリで作曲したこの作品のみずみずしさをお伝えできればと思っています。

 

尾崎敏之氏との出会いには本が一冊書けそうなくらいのドラマがあるのですが、本当に奇跡としか言いようのない偶然の重なりである日、私の手元に一冊の楽譜が届きました。それが今回演奏する「ピアノの為の幻想的断片」です。
私を音楽の世界に導いて下さった、尊敬してやまないピアニストの神野明先生のために書かれたというこの作品、先生によって初演され、その後も数回に渡り再演された曲とのこと。尾崎氏より頂いたお手紙に「この曲は神野明氏のために作曲し・・・」の1文を見たときの驚き。尾崎氏は私が神野門下だということは全くご存じなくこの楽譜を送って下さったとのことで、お互いにこの巡り合わせには本当に驚き以外の言葉が見つかりませんでした。

 

今でも耳に残っている先生のあのきらびやかな先生にしか出すことのできない音色。その音にははるかに及びませんが、私にしか出せない、私の音色を探しつつ、恩師の為に書かれたこの曲に挑戦したいと思っています。

当日会場にいらして下さる皆様と譜面に書かれた音符たちが音楽となって現れる瞬間を共有できたら。。。作曲家の想いを少しでも伝えることができたら。。。と練習に励んでおります。
会場でお会いできましたら幸いです。